歯が割れても「抜歯したくない」
千葉で根管治療が得意な歯医者、陽光台ファミリー歯科クリニックです。
「歯が割れた」と聞くと、「もう抜歯しかない」と頭をよぎるかもしれません。しかし、結論からお伝えします。歯が割れても、必ずしも抜歯が必要なわけではありません。
このブログでは、「抜歯したくない」というあなたの願いを実現するために、歯の破折の基礎知識と治療法を詳しく解説します。
歯が割れてしまう3つの主な原因
大切な天然歯が割れてしまう原因は多岐にわたりますが、特に注意すべきは以下の3点です。
強い外力(急性外傷): 転倒、事故、スポーツでの衝撃、または極端に硬いもの(氷、飴、骨など)を噛んだ時の瞬間的な強い力。
噛み合わせの負担(慢性的な力): 寝ている間の歯ぎしりや食いしばり。これは歯に持続的に大きなストレスを与え、徐々にヒビを深くします。
過去の治療による弱体化:大きな虫歯治療で歯の大部分を失っている。
特に神経を抜いた歯(失活歯)は、非常にもろくなっているため割れるリスクが高くなります。

放置は厳禁!破折の種類とリスク
歯の割れ方は、表面のわずかなヒビから、歯の根の奥まで完全に達する破折まで様々です。
クラック(ヒビ): 表面のみの小さなヒビ。

破折(割れ): 歯の一部が欠けたり、歯の根に向かって完全に割れてしまったりする状態。

特に割れた状態を放置すると、割れ目から細菌が深く侵入し、歯の根の感染(根尖性歯周炎)を引き起こします。また、神経が生きている歯(生活歯)の場合は、激しい痛みを伴うこともあります。
症状が軽いうちに、ご自身の歯の状態を正しく把握すること。これが抜歯を回避する最初の、そして最も重要な一歩です。
抜歯が必須となるケース vs 歯を残せる可能性があるケース
「抜歯したくない」という願いは当然ですが、残念ながら、歯を抜かざるを得ないケースも存在します
抜歯が「必須」となる重症ケース
最も深刻で、抜歯が避けられない可能性が高いのは「垂直性歯根破折」です。
垂直性歯根破折(完全な縦割れ): 歯の根(歯根)が歯の軸に沿って、歯茎の中の深い位置まで完全に縦に割れている状態。
理由: このタイプの破折は、割れた面に沿って細菌が侵入し、歯槽骨(あごの骨)が広範囲に破壊されます。歯を接着しても、内部の細菌感染のコントロールが非常に困難であり、そのまま残しても周囲の歯や骨を悪化させてしまうためです。

歯を「残せる可能性」があるケース
希望が持てるのは、破折が歯の根の深い部分まで達していない場合です。
歯冠部(歯の頭)のみの破折: 歯の根は無事な状態で、噛む部分や見える部分だけが割れたり欠けたりしている。
治療: 詰め物や被せ物(クラウン)で修復可能です。
割れ目が浅いもの: 割れ目が浅く、根の先まで達していない。
治療:割れ目に接着剤を流し、修理をする。
重要なのは、歯科用CTやマイクロスコープを用いた精密な診断です。「割れている」という事実は同じでも、その割れ方一つで治療法と予後が劇的に変わります。

抜歯を回避する!歯を残すための治療法
抜歯を避け、あなたの歯を救うために歯科医療は進化しています。ここでは、割れた歯を残すための専門的なアプローチを3つご紹介します。
破折線の精密な封鎖・接着(接着修復)
治療内容: マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使い、肉眼では見えない割れ目(クラックや不完全な破折線)を特定します。その割れ目に高性能な歯科用接着剤を流し込み、光や熱で硬化させて完全に封鎖します。
ポイント: この治療は、割れ目の進行を食い止め、細菌の侵入を防ぐことが目的です。接着の成功は、肉眼では不可能なマイクロスコープ下の精密な作業にかかっています。
意図的再植術
治療内容: 歯を一時的にそっと抜き取り(抜歯)、体の外で割れ目を確認・接着してから、再び元の位置に戻す(再植)外科的治療です。
ポイント: 口の中で治療が難しい、根の裏側まで達した破折線や感染部位を、術者の目で直接確認し、確実に処置できるのが最大の利点です。成功すれば、抜歯を回避し、ご自身の歯を使い続けることができます。
これらの治療はすべて、高い技術と専門的な機器(マイクロスコープ、歯科用CTなど)を必要とします。

成功の鍵は「早期発見と精密診断」:治療を始める前に知っておきたいこと
歯を残す治療が成功するかどうかは、治療の「技術」だけでなく、「診断」の精度に大きく左右されます。
1. 精密な診断に必要なツール
歯科用CT: レントゲンでは平面でしか見えない破折線を、立体的な三次元画像で捉えることができます。歯の根の深い位置の割れや、骨の破壊の度合いを正確に把握します。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡): 最大20倍程度の視野で、肉眼では絶対に見えない髪の毛のような細かなヒビ、破折線の終点、根の中の感染源などを確認します。
プロービング(深さの測定): 割れた部分の歯周ポケットの深さを測り、割れ目がどこまで進行しているかを推測します。
2. 治療の選択と費用:保険診療と自費診療の境界線
歯の破折治療において、「歯を残す」という選択は、残念ながら治療法や技術面で制限を受ける場合があります。
▼保険診療の場合
日本の保険診療では、歯の根の奥まで達した「垂直性歯根破折」と診断された場合、その破折線を修復するための精密な器具や技術(例:マイクロスコープ下での複雑な接着処置、意図的再植術など)が適用外となります。そのため、感染源となる破折歯は、抜歯が「標準的な治療方針」として推奨されることが多くなります。
▼自費診療の場合
意図的再植術や、マイクロスコープを用いた精密な接着修復、高度な歯周外科処置など、歯を残す成功率を少しでも高めるための最新の材料や技術を選択できるようになります。「どうしても抜歯したくない」という場合は、これらの自費診療のオプションを検討することになります。
費用の問題も重要ですが、「一本の天然歯を残す価値」は計り知れません。担当の歯科医師と費用対効果や治療の成功率についてしっかり話し合い、納得した上で治療を選択しましょう。

日常生活でできる予防法:二度と歯を割らないために
一度歯が割れてしまうと、その歯は他の歯よりも弱くなっている可能性があります。二度と歯を割らないために、日常生活での予防と習慣化が非常に重要です。
1. ナイトガード(マウスピース)の着用
最も重要な予防法です。歯が割れる大きな原因の一つは、睡眠中の無意識の歯ぎしりや食いしばりによる過剰な力です。
効果: 就寝時にナイトガードを装着することで、歯にかかる圧力を分散し、歯の破折や詰め物・被せ物の破損を防ぎます。

2. 噛み合わせの定期的なチェックと調整
問題点: 高すぎる被せ物や、特定の歯だけに負担が集中する不正な噛み合わせは、破折のリスクを増大させます。
対策: 歯科医院で定期的に噛み合わせをチェックし、必要に応じて僅かな調整(咬合調整)を行うことが予防につながります。

3. 極端に硬い食べ物に注意
硬すぎる食べ物を前歯で噛み切ったり、特定の歯に繰り返し強い衝撃を与えたりする習慣は見直しましょう。歯に「小さなストレスの蓄積」をさせない意識が大切です。
歯が割れても諦めない!抜歯を回避するための3つのポイント
今回は、「歯が割れても抜歯したくない」というあなたのための、歯の破折に関する専門的な情報をお届けしました。
大切な歯を残すためのカギは、以下の3点に集約されます。
診断の精度: 割れ目の「深さ」と「方向」を、歯科用CTやマイクロスコープで正確に診断してもらうこと。
早期の治療: 割れ目から細菌が侵入し、骨を溶かし始める前に、一刻も早く専門医の診察を受けること。
専門的な治療の選択: 破折線の精密な接着、意図的再植術など、歯を残すための最新かつ高度な治療法を選択すること。
ご自身の歯を残せるかどうかは、「諦めずに最善の治療法を探す」という決断にかかっています。歯の破折は深刻な状態ですが、現代の歯科医療には、抜歯を回避するための多くの選択肢があります。
まずは、精密な診断と治療が可能な当院へご相談ください。LINEまたははお電話(0438-38-4854)からご予約ができます。

医師紹介

理事長 渡辺 泰平(歯学博士)
資格
PERF-JAPAN講師(根管治療)
PERF-JAPAN認定専門医
MicroPex Hygienic Laboratory講師(歯周病治療)
Karl Kaps Germany 認定講師(マイクロスコープ)
日本・アジア口腔保健支援機構 第二種感染管理者検定講師
日本顎咬合学会 認定医
認定医日本健康医療学会 認定医
日本・アジア口腔保健支援機構 第一種感染管理者
健康医療コーディネーター