根管治療の失敗後、抜歯する前に知っておくべき事実
みなさんこんにちは。千葉県で成功率の高い精密根管治療をしている歯医者、陽光台ファミリー歯科クリニックです。
昨日のブログで、根管治療の失敗について詳しく解説しました。本日は、根管治療が失敗してしまい抜歯を選択する前に知っておいてほしいことをお伝えしていきます。
根管治療の失敗とは何か?失敗の症状と原因
根管治療(いわゆる「神経を抜く治療」)は歯の内部の感染や炎症を取り除き、歯の寿命を延ばすための重要な治療法です。しかし、残念ながら様々な要因により失敗するケースも存在します。
根管治療の失敗と判断される主な症状には、治療後も続く痛み、かんだ時の違和感、歯肉の腫れや膿の出現、そしてレントゲン写真で見られる根っこの先の黒い影(透過像)などがあります。これらの症状は治療直後に現れることもあれば、数ヶ月あるいは数年後に現れることもあります。
根管治療が失敗する主な原因
・解剖学的な複雑さ: 歯の根管は非常に複雑で、見落とされる副根管や分岐が存在することがある
・不完全な洗浄・充填: 根管内の感染組織や細菌が完全に除去されていない、または根管充填が不十分な場合
・歯根の亀裂や破折: 微細な亀裂が治療前から存在していたり、治療後に発生したりする場合
・細菌の再感染: 治療後のコロナルリーケージ(詰め物や被せ物からの細菌侵入)
前歯や奥歯など歯の種類や、初回治療か再治療かによっても成功率は変わります。特に、奥歯の複雑な根っこの形をしている歯や、長期間放置された感染歯では、治療の難易度と失敗リスクが高まります。しかし、根管治療が失敗したと診断されても、すぐに抜歯が必要というわけではありません。
根管治療の失敗が疑われる場合の正確な診断
根管治療後に違和感や痛みがあるからといって、必ずしも治療が失敗しているとは限りません。治療直後は一時的な不快感が生じることがあります。しかし、長期間続く症状がある場合は、根管治療を得意とする歯科医師による詳細な診断が重要です。
診断
・視診による歯の変色や亀裂の確認
・歯周ポケットの測定
・噛んだ時の過剰な力の確認や噛み合わせ
精密検査
・デジタルレントゲン撮影
・CBCT(歯科用コーンビームCT)検査
特に重要なのがCBCT検査です。従来の2Dレントゲンでは見えない副根管や、根尖病変の3次元的な広がりを確認できます。この検査により、再治療の可能性や予後の評価が格段に正確になります。
歯の保存可能性の評価基準
・構造的完全性: 歯の残存構造が十分か
・歯周組織の状態: 骨の支持と歯周ポケットの深さ
・根尖病変の大きさと性質: 嚢胞化していないか
・根管の解剖学的複雑さ: 再治療の技術的な実現可能性
・患者の全身状態: 治癒能力に影響する全身疾患の有無
これらの評価を総合的に行い、「抜歯」「再根管治療」「外科的歯内療法」などの選択肢の中から最適な治療計画を立てていきます。
抜歯以外の選択肢
①再根管治療(再治療)
根管治療が失敗したと診断された場合でも、多くのケースで「再根管治療」という選択肢があります。
再根管治療とは、以前の根管充填材(根っこの中に詰められたお薬)を除去し、根管を再度洗浄・消毒した後、新たにお薬を充填する治療法です。初回治療では見逃された根管の発見や、より徹底的な感染組織の除去を目指します。
専門医によって行われる自費診療での再根管治療の成功率は70~85%と報告されています。特に以下のようなケースでは良好な結果が期待できます。
・根管充填が不完全だが、歯の構造が保たれている
・新たな感染源(被せ物や詰め物の不適合など)が特定できる
・見落とされた根管の存在が確認された
・歯の根っこの破折や亀裂がない
一方、以下のような場合は再治療の予後が不良なことがあります。
・重度の歯根破折(歯の根っこが折れている)がある
・過度の歯根吸収が進行している
・極端に複雑な根管形態で機械的清掃が困難
近年の歯科技術の進歩により、再根管治療の精度と成功率は大きく向上しています。
・歯科用マイクロスコープ: 10~30倍の拡大視野で微細な根管構造を確認
・ニッケルチタンファイル: 柔軟性と強度を兼ね備えた根管形成器具
・超音波機器: 複雑な根管内の洗浄効果を高める
・MTA・バイオセラミック材料: 優れた封鎖性と生体親和性を持つ充填材
・CBCT: 3次元的な根管構造の把握と治療計画の立案
これらの技術を駆使することで、以前は困難とされていた複雑なケースでも再治療が可能になっています。しかし、上記の機器や治療器具を使用した根管治療は自費診療となります。
②外科的歯内療法『歯根端切除術』『意図的再植法』
通常の再根管治療が困難または適さないケースや再根管治療を行なっても治癒が確認できない場合、「外科的歯内療法」、特に「歯根端切除術」という選択肢があります。これは、根の先端部分(根尖部)に外科的にアプローチする治療法で、抜歯を回避する重要な選択肢です。
当院では、再根管治療を行っても治癒が確認できない場合に外科的歯内療法を行います。歯根端切除だけでなく、一度歯を抜いてお口の外で処置をしてから元の場所に歯を戻す「意図的再植法」も行っています。
歯根端切除術
※術中の映像が映りますので苦手な方はご注意ください
意図的再植法
※術中の映像が映りますので苦手な方はご注意ください
再根管治療と外科的歯内療法を選択するメリット
・自然歯の保存: 自分の歯を維持できる
・噛む機能の維持: 自分の歯特有の感覚と機能を保持
・治療期間の短縮: インプラントと比較して治療完了までの期間が短い
抜歯が必要な場合と抜歯後の選択肢
再根管治療や外科的歯内療法を検討しても、残念ながら抜歯が避けられないケースがあります。
抜歯が避けられないケース
・重度の歯根破折: 歯の根っこが大きく割れてしまっている場合
・著しい歯根吸収: 内部または外部からの進行性の歯根吸収
・広範囲の骨吸収: 歯周病による重度の骨喪失
・歯根穿孔: 修復不可能なほど大きく歯に穴が空いている場合(パーフォレーションについて詳しくはこちら)
・再治療の繰り返し: 複数回の再治療が失敗している(根管治療の治療回数の限界についてはこちら)
まとめ:根管治療の失敗と抜歯の判断基準
根管治療は歯を残すための治療法ですが、様々な要因により失敗するケースがあります。治療後の痛みや腫れが続く場合は、根管治療の知識と経験を持った歯科医師による詳細な診断が必要です。
根管治療の失敗が確認されても、すぐに抜歯を選択する必要はありません。多くの場合、再根管治療や歯根端切除術などの保存的アプローチが可能です。マイクロスコープやCBCTなどの機器と高い技術を持っている歯科医師による再治療は、70~90%の成功率が期待できます。
ただし、歯が大きく割れてしまっている場合や広範囲の骨吸収がある場合など、保存が困難なケースでは抜歯が最善の選択となることもあります。抜歯後はインプラント、ブリッジ、部分入れ歯などの選択肢があり、患者さんの状態や希望に合わせて最適な治療法を選択することが重要です。
いずれの場合も、早期発見・早期治療が成功率を高める鍵となります。定期的な歯科検診と歯科医院選び、適切な口腔ケアにより、根管治療の失敗リスクを減らし、大切な自分の歯を長く保つことができます。根管治療が失敗したと思われる症状がある場合は、お気軽に当院へご相談ください。
精密根管治療を行う歯科医師紹介
理事長 渡辺 泰平(歯学博士)
資格
PERF-JAPAN講師(根管治療)
MicroPex Hygienic Laboratory講師(歯周病治療)
Karl Kaps Germany 認定講師(マイクロスコープ)
日本・アジア口腔保健支援機構 第二種感染管理者検定講師
日本顎咬合学会 認定医
認定医日本健康医療学会 認定医
日本・アジア口腔保健支援機構 第一種感染管理者
健康医療コーディネーター